イノP応援団 フォトライターの髙木あゆみです。
鳥獣害対策の現場で見て、感じたことを、写真とともにレポートします。
今回は、宇土市網田町の上床地区の皆さんが、南小国町の脇戸地区を訪ねました。
実はこの2つの地域、鳥獣害対策をきっかけに出会った地域なんです。
2年前、これから鳥獣害対策に力を入れていきたいというタイミングで南小国町の皆さんが上床地区を訪問。
当時、上床地区で進めていた金網柵を見学しました。
そして今回。
今度は上床地区の皆さんが南小国町を訪問し、脇戸地区の鳥獣害対策を見学することに。
2年ぶりの再会を楽しみながら、それぞれの地域が抱える課題や、実際に行っている鳥獣害対策について話をしました。
宇土市上床地区と南小国町脇戸地区が鳥獣害対策でつながる
上床地区の皆さんが脇戸地区を訪ねた理由
上床地区では、2022年にイノシシによる被害があり、地域の水源を守るために金網柵を設置しました。
きっかけとなったのは、地区長さんのリーダーシップ。そして、「地域で鳥獣害対策に取り組もう」という住民の皆さんの思いでした。
今回、上床地区の皆さんが脇戸地区を訪ねた目的は、大きく2つあります。
ひとつは、イノシシなどによる農作物被害から田んぼを守る方法を学ぶこと。
もうひとつは、捕獲の文化がある地域で、箱罠などを使った捕獲方法を学ぶことです。
鳥獣害対策は、地域の環境や被害状況によって方法も変わります。
だからこそ、実際に対策をしている地域を訪ね、現場を見ながら話を聞くことには大きな意味があります。
鳥獣害対策について2つの地域が情報交換
まずは、地域の皆さんと行政担当者も交えて、鳥獣害対策について情報交換。
それぞれの地域で起きている鳥獣被害や捕獲頭数、現在抱えている課題などについて、ざっくばらんに話しました。
同じ鳥獣害対策でも、地域によって抱えている問題は違います。
こうして地域同士で情報交換することで、「そんな方法があるんだ」「うちの地域でもできるかも」という新しい気づきが生まれます。


南小国町では猟友会の高齢化が鳥獣害対策の課題に

南小国町では、猟友会の高齢化が大きな課題になっています。
かつては約200人いた銃の所持者が、現在では14人ほどに。
駆除隊が月に2回ほど山に入り、鳥獣の捕獲活動を行っています。
一方で、近年は箱罠を使った捕獲も増えているそうです。
最近では、イノシシだけでなくシカによる被害も増えてきています。
南小国町の、脇戸地区を含む4つの地区では行政と地域が協力しながら鳥獣害対策を進めています。

宇土市上床地区ではイノシシ被害への対策を進めている

宇土市でも、イノシシの捕獲頭数が増えています。
令和6年度には、市全体で1,000頭弱が捕獲され、令和7年度もその半数ほどの捕獲があったそうです。
さらに、近年はシカの出没も見られるようになっています。
網田町の中でも、上床地区は山間部に位置する集落。そのため、鳥獣被害を受けやすく、地域としても積極的に対策を進めています。
2022年には、イノシシから地域の水源を守るため、金網柵を設置しました。
ただ、上床地区には、南小国町のような昔からの捕獲文化があるわけではありません。
「自分たちの地域でも、もっと鳥獣害対策を進めたい」
そんな思いもあり、今回の視察交流につながりました。
「南小国は鳥獣対策の予算が多くていいなぁ」
情報交換の中では、こんな会話もありました。
上床地区の方から、
「南小国は鳥獣対策の予算が多くていいなぁ」
という声が。
一方、脇戸地区からは、地域で定期的に勉強会を開催していることや、地区内でも人によって鳥獣害対策への意識や取り組み方に違いがあることなど、率直な話が出ました。
こうした話は、資料を読むだけではなかなか分かりません。
実際に地域で活動している人同士だからこそ、話せることがあるのかもしれません。
鳥獣害対策の現場を見ながら地域同士で学ぶ
情報交換のあとは、いよいよ現場へ。
「実際に見てみよう!」
ということで、脇戸地区で行われている鳥獣害対策をみんなで見て回ります。
今回見学したのは、電気柵、金網柵、箱罠。
それぞれの対策について、設置方法だけではなく、普段どのように管理しているのか、どんな工夫をしているのかも教えてもらいました。
電気柵で田んぼを守るための鳥獣害対策を見学

まずは、田んぼを守っている電気柵を見学。
畑までの道中、山を見ながら、上床地区の皆さんからは、「植物が違う!」という声もありました。
地域によって環境が違うため、電気柵の設置や管理にも、それぞれの工夫があります。


脇戸地区では、補助制度を活用し、電気柵下に敷く電線の編み込まれた防草シートを購入し、農家の皆さんがそれぞれ設置しています。設置前には、イノPによる講習も行いました。
電気柵は、設置しただけで終わりではありません。
草が伸びれば漏電の原因になることもあるため、定期的な管理が必要です。
実際の田んぼを見ながら、電気柵の設置や管理について話を聞きました。


金網柵で山からの獣の侵入を防ぐ
続いて見学したのは、スギ林と畑の間に設置された金網柵です。


以前はピンク色のテープやネットなどで畑を囲っていた場所も、今ではすっきり。
この金網柵は、田んぼや集落全体を完全に囲っているわけではありません。柵の端と端がつながっていない場所もあります。
それでも、山から下りてくる獣の通り道を変え、守りたい場所への侵入を防いでいます。
そして、今回みんなが注目したのが、金網柵の周りの草刈り。
とてもきれいに管理されています。


イノPのたっちゃんも、
「これなら機械が入りやすいし、草刈りもしやすい!」
と感心していました。
鳥獣害対策は、柵を設置したら終わりではありません。長く効果を維持するためには、**「いかに管理しやすいか」**も重要なポイントです。
ちなみに、金網柵の奥にある立派な小国杉にも、皆さん興味津々でした。






箱罠を見学してイノシシ捕獲のコツを学ぶ
今回、上床地区の皆さんが特に楽しみにしていたのが、箱罠の見学です。
見学した箱罠は、年間3~4頭ほどのイノシシを捕獲しています。中には100kgクラスの大きなイノシシが捕まることも。


この箱罠の餌には、米ぬかや牛の飼料、トウモロコシなどを使っているそうです。中には、においが強い「チキンラーメン」を使う人もいるそうです。食いつきがいいそうですよ〜
箱罠の下にはベニヤ板を敷くなど、試行錯誤のうえで工夫もされています。
そして、穴井さんから教えてもらったのが、箱罠にイノシシを慣らすための方法。
罠を設置したり移動させたあと、最初の1週間ほどはあえてゲートが閉まらないようにします。そうしてイノシシに箱罠そのものに慣れてもらうそうです。
人それぞれ工夫の仕方も異なります。そんな現場の声を、上床地区の皆さんは熱心に聞いていました。


「2回勉強に行ったけんね」学んだ鳥獣害対策が地域の行動につながる
ここで、たっちゃんが感動した場面がありました🥹
上床地区の女性が、
「イノシシが栗を食べに来る」
という話をしてくれました。
そして、
「前に教えてもらったから、木を切ろうと思ってる。2回勉強に行ったけんね」
と。
動物が好む果樹や栗など、実のなる木をそのままにしておくと、野生動物を集落近くに引き寄せる原因になります。
そこで、鳥獣被害を防ぐために収穫する予定のない果樹などは木を切るよう推奨しています。実際に切るのは人手もいるし簡単ではありませんが、もう何年も前に話したことを覚えていてくださったんですね。

さらに、その栗の木と箱罠の距離は、わずか30mほど。
イノシシは栗を食べに来ているのに、箱罠には入らない。
「それなら、箱罠を置く場所をもう一度考えてみてもいいかもしれない」
と、たっちゃんから提案がありました。
鳥獣害対策の地域交流が次の一歩につながる
今回の交流で印象的だったのは、上床地区にも脇戸地区にも、
「自分たちの地域をもっと良くしたい」
という思いがあったこと。
2年前は、南小国町の皆さんが上床地区を訪れました。
そして今回は、上床地区の皆さんが南小国町を訪問。
お互いに現場を見て、話を聞いて、地域の課題を共有しました。
鳥獣害対策という共通のテーマが、地域と地域、人と人をつないでいます。
今回の交流で得た知識や気づきが、それぞれの地域で次の一歩につながっていくことを願っています。
一つの地域で生まれた取り組みが、隣の地域へ、そのまた隣の地域へ。
そんな「アメーバ的な」広がりが、鳥獣害対策の輪をもっと大きくしていくことと思います。
地域で鳥獣害に悩んでいる人たちが、地域の垣根を越えて話をする。
実際の現場を見て、知恵を交換する。
そして、学んだことを自分たちの地域で試してみる。
今回の上床地区と脇戸地区の交流が、そんな地域同士のつながりの一つのモデルになればと思います。




