イノP応援団 フォトライターの髙木あゆみです!
令和8年熊本地震特別版・第2弾をお送りします。今回は、昨年の水害に続き、熊本地震で大きな被害を受けた氷川町でトマトを作る宮崎夫妻の取り組みについてご紹介します。

イノPの原点でもある「くまもと☆農家ハンター」。そのメンバーとして活動してきたのが、熊本県八代郡氷川町で「氷川アグリクラブ」を営む宮崎修太さん・悦子さん夫妻です。
令和7年の水害で大きな被害を受けた宮崎夫妻は、その後、令和8年7月に発生した熊本地震でも被災しました。
3週間にわたって水が出ない状況が続くなか、例年通り粛々と農業に勤しんでいます。トマトを届けるため、地域のため、被災した仲間のために、前へ前へと歩みを進めています。
そこには、災害に備えた設備への投資だけではなく、農家仲間とのつながりや地域との関係がありました。
2025年、水害で大きな被害
昨年8月、宮崎夫妻の拠点である熊本県八代郡氷川町を豪雨が襲いました。
トマトを定植したのは8月10日。その翌日の8月11日、豪雨に見舞われました。
定植したばかりの苗は雨の影響を受け、その後、水が引いてからは圃場がカチカチに硬くなり、生育に大きな影響が出ました。農業用の機材なども被害を受け、損害は総額1,000万円以上。収益面でも500万~600万円ほどのマイナスとなりました。
「これからどうする」と呆然とする中、発災翌日には農家ハンターの仲間や同業の友人が駆けつけてくれました。
片付けや復旧を手伝ってくれる仲間の姿が、大きな力になり、
「もうダメだ」と落としかけた肩を、もう一度ぐっと上げることができたと言います。

水害をきっかけに「災害に遭っても持続できる農業」への転換
大きな被害を経験した宮崎さんは農業のあり方を見直しました。
目指したのは、「災害に遭っても持続できる農業」です。
水回りの設備を整え、井戸を掘削。
暖房機などの設備にも、約1,000万円を投じました。
台風が多い地域ということもあり、これまでもハウスごとに作付け時期をずらすなどの対策をしていました。
それでも自然災害の前では想定を超える被害が起こります。
そこで、用水路から水を引くための設備を設置し、蓄電池も備えました。
「今年は失敗できない」
そんな思いで迎えた、今年の定植シーズン。
しかし、今度は大地震が地域を襲いました。
昨年の経験が生きた、大地震と停電・断水
今回の地震では、幸いにも井戸とモーターは破損しませんでした。
停電した際には、農業用の大容量発電機を井戸ポンプにつなぎ、生活用水と農業用水の両方を確保することができました。
住居や同じ敷地にある母屋も被災しましたが、離れには蓄電池とソーラーパネルを設置していたため、停電中でも冷房を使うことができました。
昨年の水害を経験したあと、電力会社からの配電と発電機を切り替えられるよう工事を終えていました。
そのため停電していても、スイッチ一つでビニールハウスの電力を確保することができました。
昨年の水害の経験があったからこそ、宮崎さんは設備を見直していました。
デジタルとアナログのハイブリッドが一番強い

「自動で水が出るのもいいけど、電気がこなければ、逆に誤算になってしまいます」
便利な設備を導入することだけが、防災ではありません。
宮崎さんは
「デジタルとアナログのハイブリッドが一番強い」と実感しました。
昨年の水害を経験し、思い切って設備投資をしたからこそ、今回の大地震による停電・断水にも対応することができました。
ビニールハウスの内側には、遮光シートもさらに重ねました。
電気が止まっても、水を確保できる。自動設備が動かなくても、別の方法で農業を続けられる。そんな「もしものとき」を想定した備えが、災害に強い農業につながっています。

今年は安定してトマトを届ける
今年、宮崎さんが掲げる目標はシンプルです。
「今年は安定してトマトを届ける」
当たり前のように聞こえるかもしれません。
しかしその「当たり前」は、農業では決して当たり前ではありません。
天候に左右され、台風に襲われ、それだけでなく予期しない豪雨や地震が起きることがあることを、熊本の農家の皆さんは痛いほど知っています。
自然と向き合う農業だからこそ、安定して作物を育て、予定通りに届けることは簡単ではありません。

「助けて」と言わなくても、仲間が駆けつけてくれる
今回も、被害が比較的小さかった地域の農家仲間が、すぐに駆けつけてくれました。その中にはくまもと☆農家ハンターのメンバーもいます。
「助けてほしい」
「困っている」
そう声を上げるのを待たずに駆けつけてくれました。
そんな「プッシュ型」の思いやりは、2年続けて天災に見舞われた宮崎夫妻を支えました。
宮崎さん自身も、今回の地震で収穫間近の梨が壊滅的な被害を受けた農家仲間のもとへ、顔を出すようにしています。
どれだけ大きな被害を受けていても、誰もが「大丈夫」と言います。そう言われても、何もできることがないとしても顔を出す。
顔を合わせることにどれだけ救われるのかを、自分自身が知っているからです。


(写真提供:宮崎修太さん)
日頃のつながりが、災害時の支援をつなぐ
宮崎夫妻は、地域とのつながりも大切にしています。
修太さんは、小学校で食育の授業をすることもあります。そのため、避難所となっている学校にも顔見知りがいます。
今回の地震で、避難所で支援活動をしたいと名乗りをあげる知人がいました。日頃から地域の人たちと関係を築いている修太さんの口添えもあり、スムーズに進んだそうです。
「災害が起きてから関係をつくる」のではなく、平時から顔の見える関係をつくっておく。
災害への備えは、設備だけではありません。仲間や地域との関係性もまた、災害に強い地域をつくっていきます。
悦子さんは地域の子どもたちのために「お庭プール」開設!
妻の悦子さんも、地域のために汗を流しています。
宮崎夫妻には、小さなお子さんが3人います。被災した家を片付けながら、子どもたちの心や生活を守るだけでも大変なことです。
子どもたち自身も、地震への恐怖に加え、日常が大きく変わったことによるストレスを抱えています。
幸い、井戸から水をくみ上げることはできました。農家だからこそ使える広い敷地があります。
そこで悦子さんが始めたのが、“お庭プール”でした。自分の子どもたちだけでなく、地域の子どもたちの遊び場となれば、子どもも楽しく親も助かるのではないかと考えてのことでした。
しかし、水に困っている人がたくさんいるなかで、飲料用ではないとはいえ、水をプールに使うことに、最初は気が引ける思いもありました。
それでも、やってみると、子どもたちは大喜び。暑さと災害のストレスを忘れるように、元気いっぱいに遊んでいます。
「去年助けてもらったから、ここで恩返ししなきゃと思って」
時には近くの学校の学童まで子どもたちを迎えに行くこともあります。
最初は一人で始めた見守りも、今ではたくさんの人や団体がサポートしてくれるようになりました。


「去年、水で受けた被害と恩、今年は水で返す!」
昨年は、水害によって大きな被害を受けました。
そして今年は、その「水」を地域のために使っています。
「去年、大変だった水の被害。水害によって皆さんから受けた恩を、今年、水で返す!」
そんなロックなマインドを持つ悦子さん。
自分たちが大変なときでも、できることを探す。
そんな姿を見ていると、「復旧」という言葉だけでは表せない、人の強さを感じます。
災害を避けることはできません。けれど、災害に負けない強い地域をつくるのは、結局、人の力なのかもしれません。


対策の成果あり、トマトは余震・断水に負けずに育っています。
おとなも子どもも夢中になる、氷川アグリクラブの絶品トマトを、またみんなで食べられますように。




